「心に感じたことを、
出来るだけ、心に近い状態で
相手に伝えたい」
そう思ってはいても、
「伝えるべきでない時」が
在ること自体は、
こんなわたしでも(ある程度は)
理解している(つもり)です。
三歳くらいですかね?
通勤電車の中、
幼い女の子が、
身の丈20センチほどの
アンパ○マンのぬいぐるみを
大事そうに抱き締めていました。
わたしの膝の向こうで、
踊る心を表すように揺れる、
ハート柄の白いタイツが
何とも愛らしくて、
胸がきゅっとしましたね。
自ずと目を細めていたのでしょう。
わたしの視線に気づいて、
「○○ちゃんは、
アンパ○マンが
大好きなんだよね(笑)?」
女の子とよく似た目元の
おばあちゃまが、
女の子の代わりに
わたしに
教えてくれました。
「そうなんだぁ……」
わたしは、目一杯の笑顔で、
女の子の方を見て、
笑ったはず?笑えたはず?
「貴女が大切にしている、
そのアン○ンマン……
なかなかストイックぶりで、
『愛と勇気だけが友達』
なんです。
いかにも仲が良さそうな
しょく○んまんも、
カレーパン○ンも、
アンパ○マンにとっては、
『友達』ではないんです。」
わたしの寂れた心の声など、
このいたいけな幼女に
伝えられるわけもなく、
窓の外に目をやろうとしたその時、
女の子がアンパ○マンの顔を
自分に向けて、
赤い鼻にむちゅううっと
小さな唇を押し付けたのです。
「アンパン○ン。
『友達』じゃないけど、
この子なら、
貴方の『本当の仲良し』に
なれるかも知れませんね」
ふっと笑って、
窓の外に目をやると、
アニメのような青い空が
そこにありました。